クリングルファーマ株式会社.

DEVELOPMENT

研究開発

HGFによる脊髄損傷急性期患者第III相試験はこちら

脊髄損傷急性期

脊髄とは脳と体をつなぐ神経が集積している組織であり、脊椎と呼ばれる骨の中に保護されております。脊髄損傷とは、事故や転倒により脊髄に強い外力が加わり、組織が損傷を受けた結果、運動神経や感覚神経の機能が失われ、運動障害や感覚障害を発症する疾患です。国内では年間約5千人の新規患者が発生すると報告されております。しかしながらこれまでのところ、損傷した脊髄に対する有効な治療法はなく、脊髄を囲む脊椎の骨折や脱臼を治療するための手術や、リハビリテーションによる残存神経機能の有効利用と日常生活動作の獲得など、対症療法のみとなっております。

声帯瘢痕の説明

脊髄損傷の発症メカニズムとHGFによる治療効果

HGFは神経細胞に対し保護作用を示すこと、軸索伸展の促進作用があることから、脊髄損傷の治療薬として開発される可能性があると考えられます。脊髄損傷は外力によって引き起こされる組織の損傷(一次損傷という)に続いて周辺組織に損傷が広がる二次損傷が起こります。脊髄損傷の急性期においては、この二次損傷を抑えることが治療につながると考えられております。
当社では慶應義塾大学医学部整形外科との共同研究により、脊髄損傷モデル動物を用いて組換えヒトHGFタンパク質の薬理効果を確認する試験を実施したところ、運動機能評価において有効性が確認されました。そこで、医薬品の開発に必要な非臨床試験(毒性試験、薬物動態試験など)を実施して、臨床試験に開発ステージを進めました。脊髄損傷急性期患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験結果の概要を表に示します。

脊髄損傷急性期患者を対象とした第I/II相試験結果の概要
デザイン

多施設、無作為化、二重盲検、並行群間、プラセボ対照比較試験

患者母集団

18歳以上、75歳以下の頚髄損傷患者
受傷後66-78時間の時点で改良Frankel分類A/B1/B2に該当する患者

用法用量

0.6㎎/回、1回/週、計5回、脊髄腔内投与
(KP-100IT群:28例、プラセボ群:17例)

主要評価項目
  • 評価基準

    安全性、抗体産生の確認
    ASIA motor scoreの24週時におけるベースラインからの変化量

  • 結果

    安全性及び忍容性はいずれも良好であった。
    ASIA motor scoreの24週時におけるベースラインからの変化量について有意な差がみられなかった

副次評価項目
  • 評価基準

    神経学的評価項目の推移

  • 結果

    ASIA motor scoreの20週時におけるベースラインからの変化量について有意差を認めた。

主要評価項目のうち、安全性に関する項目については問題ないことが確認できましたが、有効性の指標としたASIA motor score の24週時におけるベースラインからの変化量では有意な差が得られませんでした。しかしながら、経時的な推移ではプラセボ群に比較してHGF投与群において機能回復の傾向が一貫しており、副次評価項目であるASIA motor scoreの20週時におけるベースラインからの変化量について有意差が認められたことから、HGFのPOCが得られたと考えております。

本試験の結果を踏まえて、HGFは2019年9月に厚生労働省により脊髄損傷急性期を対象とした希少疾病用医薬品指定を受けました。また、本試験の結果は、国際医学雑誌Journal of Neurotraumaにも論文発表されております(Nagoshi et al, 2020.)。この試験で得られたPOCを検証する目的で次の第Ⅲ相試験の計画を策定し、下表に示す概要で2020年7月より第Ⅲ相試験を開始しております。

脊髄損傷急性期患者を対象とした第Ⅲ相試験の概要(実施中)
デザイン

非ランダム化、単群、多施設共同試験

患者母集団

18歳以上、89歳以下の頚髄損傷患者
受傷後66-78時間の時点でAIS Aに該当する患者
目標症例数:25症例

用法用量

0.6㎎/回、1回/週、計5回、脊髄腔内投与

主要評価項目

評価基準

投与後6ヶ月のAISがC以上に改善した症例割合

副次評価項目

評価基準

神経学的評価項目の推移
有害事象の発生

脊髄損傷急性期,薬事承認後のサプライチェーン

脊髄損傷急性期
薬事承認後のサプライチェーン

脊髄損傷急性期を対象とした製品のサプライチェーンについては、既に図に示すような提携が構築されております。各社と当該製品の販売およびプロモーションの提携をすることで、より確実かつスムーズなサプライチェーンが構築されたと考えております

用語解説
用語
意味
改良Frankel分類
四肢麻痺の機能障害を5段階に分類したFrankel分類を、さらに予後の違いから細分化したもの。完全麻痺のAから正常のEまで11段階に分類される。
ASIA motor Score
米国脊髄障害学会による運動機能を評価する指標で、上肢(50点)と下肢(50点)の運動機能スコアの合計(100点)で構成される。脊髄の各部位に関連した主要筋肉が動くかどうかを点数化したもの。実施が容易で再現性が高いこと等を理由に広く普及している脊髄損傷急性期の評価項目。
AIS
ASIA impairment scale、米国脊髄障害学会が定めた脊髄損傷の機能障害尺度。最も重度のA(完全麻痺)から正常のEまで5段階に分類される。
参考文献

Kitamura K, Iwanami A, Nakamura M, et al. Hepatocyte growth factor promotes endogenous repair and functional recovery after spinal cord injury. J Neurosci Res 2007; 85:2332-2342.

Kitamura K, Fujiyoshi K, Yamane J, Toyota F, Hikishima K, Nomura T, Funakoshi H, Nakamura T, Aoki M, Toyama Y, Okano H, Nakamura M. Human hepatocyte growth factor promotes functional recovery in primates after spinal cord injury. PLoS One. 2011; 6: e27706.

Kitamura K, Nagoshi N, Tsuji O, Matsumoto M, Okano H, Nakamura M. Application of Hepatocyte Growth Factor for Acute Spinal Cord Injury: The Road from Basic Studies to Human Treatment. Int J Mol Sci. 2019 Feb 28;20(5):1054.

Nagoshi N, Tsuji O, Kitamura K, Suda K, Maeda T, Yato Y, Abe T, Hayata D, Matsumoto M, Okano H, Nakamura M. A phase I/II study for intrathecal administration of recombinant human hepatocyte growth factor in patients with acute spinal cord injury: a double-blind, randomized clinical trial of safety and efficacy.. J Neurotrauma. 2020 Apr 23. doi: 10.1089/neu.2019.6854