クリングルファーマ株式会社.

DEVELOPMENT

研究開発

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

ALSは、運動神経の変性によって徐々に体が動かなくなる神経難病の象徴的な疾患です。国内では現在約1万人の患者が難病指定を受けております。ALSの発症要因は遺伝によるもの、グルタミン酸毒性によるもの、原因不明のものと様々ですが、運動神経細胞が障害を受け脱落することにより筋肉の萎縮が起こることが共通する現象であるため、運動神経細胞を保護することが治療効果につながると考えられます。したがって、脊髄損傷同様に、HGFの神経細胞に対する保護作用、軸索伸展の促進作用はALSの治療につながると期待されます。

ALSの発症メカニズムとHGFによる治療効果

ALSの発症メカニズムとHGFによる治療効果

当社では、東北大学医学部脳神経内科との共同研究により、ALSモデル動物を用いて組換えヒトHGFタンパク質の薬理効果を確認する試験を実施したところ、運動機能の回復、発症の遅延、生存期間の延長といった効果が確認されました。そこで、医薬品の開発に必要な非臨床試験(毒性試験及び薬物動態試験など)を実施して、臨床試験に開発ステージを進めました。ALS患者を対象とした第Ⅰ相試験結果の概要を下表に示します。

ALS患者を対象とした第Ⅰ相試験結果の概要
デザイン

オープンラベル、用量漸増試験、単回投与3群、反復投与2群(各群3例)

患者母集団

20歳以上、65歳未満のALS患者
発症後3年以内のALS患者であってALS重症度分類※が1もしくは2の患者

用法用量

脊髄腔内に治験機器を埋込、皮下ポートを通じて治験薬を脊髄腔内に投与した。
単回投与は0.2mg、0.6mg、2.0mgで実施した。
反復投与(1週ごとに5回投与)は、0.6mg、2.0㎎の2用量で実施した

主要評価項目
  • 評価基準

    安全性及び忍容性

  • 結果

    安全性及び忍容性はいずれも良好であった。

副次評価項目
  • 評価基準

    • ・薬物動態の解析
    • ・抗体の産生の有無
  • 結果

    • ・薬物動態学的特性を検討した結果、半減期は1.2-1.4日であり、反復投与による蓄積性はないものと考えらえた。単回投与、
      反復投与時ともに血中への移行はほとんどなかった。
    • ・抗体の産生は認められなかった。

当該試験の主要評価項目は安全性及び忍容性の確認について、重篤な副作用は認められず、良好であることが示されました。また、副次評価項目として、適切な投与量を策定するために薬物動態を検討した結果、有効性を検討するために必要な投与量についての知見が得られました。本試験の結果は、国際医学雑誌Journal of Clinical Pharmacologyに論文発表されております(Warita et al, 2019.)。
この試験で得られた結果を基に、POCの確認を目的とした第Ⅱ相試験を実施しております。ALS患者を対象とした第Ⅱ相試験の概要は下表のとおりです。

ALS第Ⅱ相試験の概要(実施中、患者組入れ終了)
デザイン

プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(非盲検非対照継続投与期を含む)(医師主導)

患者母集団

20歳以上、70歳以下のALS患者
12週間の前観察期のALSFRS-Rスコアの変化量が-1~-3の範囲にある患者
目標症例数48例(HGF群32例、プラセボ群16例)

用法用量

脊髄腔内にカテーテルを挿入し、皮下ポートを通じて治験薬を脊髄腔内に投与する。
2.0㎎/回、1回/2週、24週間(二重盲検期)+継続投与期がある場合は24週(用法用量は同じ)

主要評価項目

評価基準

二重盲検期24週のALSFRS-Rスコア変化量の群間差

副次評価項目

評価基準

長期投与における有効性及び安全性を確認する

当該試験は医師主導治験であるため、当社は治験薬提供者として携わり、試験終了後の事業化に関しては当社が独占的に行う契約となっております。

用語解説
用語
意味
ALS重症度分類
厚生労働省特定疾患研究調査において定められたALSの重症度。軽度の1から重度の5まで5段階に分類される
ALSFRS-Rスコア
ALS患者の日常生活活動を見るもので、12項目の動作について各々0~4の5段階で点数化するもの。
参考文献

Sun W, Funakoshi H, Nakamura T. Overexpression of retards disease progression and prolongs life span in a transgenic mouse model of ALS. J Neurosci. 2002;22:6537-6548

Ishigaki A, Aoki M, Nagai M, Warita H, Kato S, Kato M, Nakamura T, Funakoshi H, Itoyama Y. Intrathecal delivery of hepatocyte growth factor from amyotrophic lateral sclerosis onset suppresses disease progression in rat amyotrophic lateral sclerosis model. J Neuropathol Exp Neurol. 2007;66(11):1037-1044

Warita H, Kato M, Asada R, Yamashita A, Hayata D, Adachi K, Aoki M. Safety, Tolerability, and Pharmacodynamics of Intrathecal Injection of Recombinant Human HGF (KP-100) in Subjects With Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Phase I Trial. J Clin Pharmacol. 2019 59(5):677-687.