
|
ガンの多くは上皮組織(例えば胃や腸の内面をおおっている細胞)で発生します。
そこからガン細胞が離脱し、上皮組織を区切っている基底膜を破って周囲の組織に入り込みます。
これを浸潤といいます。
|
浸潤したガン細胞は血管やリンパ管に侵入して遠くの組織に運ばれ、
そこで増殖して新たなコロニー(転移巣)を作ります。これがガン転移のしくみであり、浸潤が大きなカギとなっているのです(図1)。
|

図1:クリックすると拡大
|
| ガン細胞の浸潤は、近接する宿主の間接細胞(主に繊維芽細胞など)の相互作用によって起こり、線維芽細胞が分泌する液性因子によって活性化されます。長年の研究により、
この因子はHGFというタンパク質であることがわかりました(図2)。
|
| したがって、
HGFの働きを妨げる分子が見つかれば、浸潤を防ぎ、ガン転移を阻止する新しい制ガン剤に
なるはずだと考えられるようになりました。
|

図2:クリックすると拡大
|
|
血管新生とは、既存の血管から新しい血管の芽が伸び、新しい血管網ができることです。
ガン組織は活発な血管新生を促す液性因子(腫瘍血管新生因子)を分泌し、腫瘍組織内に
血管網を作ります。この血管を介してガン細胞に酸素と栄養分が供給され、ガンは急激に
増大します。そこで、血管新生を抑制する薬剤でガンを休眠状態にしようというのが、
血管新生阻害による制ガン方法です。
|
|
NK4はタンパク質分解酵素でHGFを断片化して得られた分子で、HGFの競合アンタゴニスト
としてHGFが引き起こすガン細胞の浸潤をほぼ完全にブロックすることができます(図3)。
|
|
また、HGFには強力な血管新生促進活性がありますが、NK4はこれを阻害することも可能です。
さらに、VEGFやbFGFという因子によって促進される血管新生もほぼ完全に阻害できることが
明らかになり、制ガン効果への期待がますます高まりました(図4)。
|
| NK4には上記のように、浸潤阻害と血管新生阻害の2つの効果があり、癌をいわば凍結・休眠状態に
封じ込める新しい制癌方法と言えます(図5)。
|
|
現在多くの血管新生阻害剤が製薬企業によって
開発されていますが、NK4のようにユニークな2機能性を持つものは知られていません。従って、
NK4はこれまでにない制癌剤として21世紀の医療に大きく貢献する可能性を秘めています。
NK4の投与方法としては、タンパク質投与と、遺伝子治療の2種がありますが、マウスモデルにおいて
様々な固形癌に対して劇的な効果が認められています(表1)。
|
表1.実験動物においてNK4の制癌作用が認められた癌
| 癌の種類 | NK4による治療法 | 認められた制癌作用 |
| 肺癌 | タンパク質投与or遺伝子治療 | 延命・転移抑制・成長抑制 |
| 乳癌 | タンパク質投与 | 転移抑制・成長抑制 |
| 胆のう癌 | タンパク質投与or遺伝子治療 | 浸潤阻害・成長抑制 |
| 膵臓癌 | タンパク質投与or遺伝子治療 | 延命・浸潤・転移抑制・成長抑制・癌性腹水の抑制 |
| 胃癌 | 遺伝子治療 | 転移抑制・成長抑制 |
| 大腸癌 | 遺伝子治療 | 転移抑制・成長抑制・延命 |
| 卵巣癌 | 遺伝子治療 | 延命・転移抑制・癌性腹水の抑制 |
| 腎癌 | 遺伝子治療 | 成長抑制 |
| 悪性黒色腫 | 遺伝子治療 | 転移抑制・成長抑制 |
NK4に関する参考文献(総説)
|