難治性疾患の再生・治癒
HGFは生体のもつ自然治癒力を支える実行分子といえます。しかしながら、 組織・臓器の傷害や細菌・ウイルスの感染が急速かつ広範囲に及ぶことによって、
組織傷害が自然治癒力を上回るレベルに到達すると重篤な急性疾患の発症に至ります。
また、肝硬変や慢性腎不全(腎硬化症)に代表されるような慢性線維性疾患におきましては、
再生因子として機能すべきHGFの発現低下をきたしています。言い換えれば 再生システムの不全(あるいは自然治癒力の低下)が慢性線維性疾患の発症・進展に
つながっています。従って、急性、慢性を問わず、HGFを外因的に補充し生体の修復能を
高めることが、様々な疾患の発症阻止あるいは治療につながることが期待されます。
これまでに様々な疾患モデル動物でなされてきたHGF投与の結果は、いずれも、
HGFが著しい発症阻止あるいは治癒作用をもつことを示しています。それらの実験結果に
基づいてHGFの臨床応用が期待される疾患を表にまとめました。 劇症肝炎、心筋梗塞、急性腎不全、脳梗塞などの急性臓器疾患の発症には、
それぞれ肝細胞、心筋細胞、ニューロンなど組織の特異機能を担っている分化細胞の
アポトーシスが関与することが明らかにされており、これら難治性急性疾患では細胞死の
急激な増加をいかにくい止めるかが初期治療の決め手となります。 劇症肝炎、心筋梗塞、急性腎不全、腎移植、急性肺傷害、脳梗塞を引き起こした実験動物に
組換えHGFタンパク質を投与すると強力な抗細胞死作用や再生促進作用による発症阻止や
臓器の治癒促進が認められます。一方、とりわけ患者数も多くしかも不治の病として
とり残されているのが慢性線維性疾患です。HGFは肝硬変、慢性腎不全、肺線維症、心筋症など
慢性線維性疾患に対し強力な治療効果を示しています。急性臓器疾患や慢性線維性疾患に対する
HGFの治癒作用は、高次組織の再生や保護を担うHGFの多才な生理活性によって発揮されるものであり、
組織・臓器が異なってもHGFによる治癒作用のメカニズムは基本的に共通であると考えらます。
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